個別指導計画(IEP)
本校の指導の根幹ともいえる「個別指導計画」は、生徒自身が取り組みやすい、またその生徒に今必要な対人面を含めた生活面や学習面などの課題を、一人ひとりに目標として設定したものです。作成の際は、全職員がさまざまな角度から生徒の行動を観察し、心理検査の結果や保護者の方のご意見も反映させ、個々に合ったより良い目標を設定します。授業中に視覚支援カードやチェックシートなどを用いる生徒、朝の会の前に対人面の約束事のカードを確認する生徒などもいて、自分の目標に取り組みやすいように工夫をしています。1日の終わりには、全生徒が担任と「振り返りの時間」を持ちます。1日の取り組みについて一人ひとりが担任と一緒に振り返り、翌日の登校につなげていきます。
心理検査(WISC Ⅳ)の活用
入学をご希望の方には、WISCという心理検査の結果をご提出いただきます。この結果から、生徒が見たり聞いたりして得た情報をどのように処理しているかが分かります。生徒が学校生活の中で苦手さを感じる原因や、どのような支援が有効なのかなど、心理・医療の専門的な立場からの視点をもとに、学校生活をサポートしていきます。
個別指導計画の例
▼ 悪気はないのに、友達が嫌がる声をかけてしまうAくんの場合
状況 | 余計なひと言が多く、相手が嫌がることをついつい言ってしまい友人とのトラブルが多い。 本人はなぜ相手が嫌がるのかを理解できず、「なぜか自分がいつもトラブルに巻き込まれる」と文句を言っている。 |
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WISCの結果 | 視覚性優位の結果なので、イラストや絵などの「見て得た情報」を理解するのは得意だが、 ことばや「聞いて得た情報」を理解するのは苦手。 |
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目標 | 相手の嫌がることを言わない。 |
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教員が行ったサポート | WISCの結果から、目で見て目標を確認できる支援が有効なことが分かるので、「視覚支援カード」を用いた支援を行うことを決めた。登校した段階でカードを3枚渡し、学校生活の中で相手の嫌がることを言ってしまった際には、教員がカードを受け取ることにし、個別学習時間にカードの枚数をもとに1日の学校生活を振り返らせることとした。 |
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目標を立ててからの生徒の変化 | カードを使い始めてすぐの時期は、相手の嫌がることを言ってしまうことも多く、教員がカードを3枚受け取る日も多かった。しかし、その都度、カードを受け取ったそれぞれの場面で「何が相手にとって嫌なことばだったか」を具体的に確認していくことで、それらのことばに徐々に気をつけられるようになり、教員がカードを受け取る回数も減っていった。また、個別学習時間に、相手を嫌がらせてしまうことばの代わりに「やさしい声のかけ方」を教員と練習し、相手にやさしい声をかける場面も増え、トラブルも減って落ち着いた学校生活を送れるようになった。 |
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▼ 整理整頓が苦手なBさんの場合
状況 | 荷物を整理することが苦手で、学校のロッカーはいつもぐちゃぐちゃ。自分のものがどこにあるのか分からなくてパニックになることが多い。 |
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WISCの結果 | 言語性優位の結果なので、ことばや「聞いて得た情報」を理解するのは得意だが、 絵やイラストなどの「見て得た情報」を理解するのは苦手。 |
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目標 | ロッカーを整理整頓して使う。 |
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教員が行ったサポート | WISCの結果から、ことばでの支援が有効なことが分かるので、ロッカー内をビニールテープで区切り、どこに何の荷物を置くべきかがことばで示されたラベルを貼りつけることにした。 |
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目標を立ててからの生徒の変化 | 最初は、ロッカー内の区切りに従って荷物を置けているか、登校時に教員と一緒に確認することから始めた。どこに何を置けば良いのかが明確なので、今までのようにぐちゃぐちゃに置いてしまうことは減り、徐々に整理整頓ができるようになっていった。やり方に慣れてくると、教員が一緒に確認しなくとも自分自身で確認するようになり、整理整頓が習慣化していった。学年が終わる頃には、荷物の量が多くなった際に自分でロッカー内の区切りを変更するなど、自分自身を支援する方法を身につけることができるようにもなった。 |
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